辻 石斎
北大路魯山人が大正14年開業の「星岡茶寮」のためにデザインし、二代目 辻 石斎と作り上げたひょうたん柄の盆。 50年以上前に粗挽きされた木地のストックが蔵から発見されたことがきっかけで、五代目 辻 石斎 × PHAETON によって黒漆で仕上げられた特注品。今では新たに手に入れることが難しい、当時の熟練技術によって仕上げられた大判の木地が現代の顔を持って復活した。 スタンダードな盆でありながら、座して食事する際に手に取りやすいサイズ。そして魯山人がテーブルの上で使われることを想定したであろう絶妙な脚の高さで、合理的かつ日本的な高貴さを思わせる美観を損なわない美しい盆の形状に仕上がっている。 銀箔の上に文字をのせるデザインは、もとは無地の箔の部分にその時々の文字を書いて使うものであったが、盆の生産が増えるにつれ、文字自体もデザインの一部として蒔絵で仕上げられることとなった。日月椀同様、箔が絵柄のベースとなっていることで、高価な器であっても普段使いできるように、絵柄が薄くなってもすぐに箔の貼り直しや絵柄の再絵付けができる秀逸なシステムを取り入れている。魯山人が好むこの箔の上に絵柄を施す手法と瓢柄は、品名にもなっている琳派の「酒井抱一」の多大な影響から来ており、魯山人らしいユニークかつ豊かな発想が形となった傑作である。 「在陋巻不改 其楽賢哉」 古く汚いうらだなにすみ、一向に改めようとしない その方が気楽で片肩がこらない、下世話に言えば 「楽は下に在り」
空気中の塵との戦いの中で行なう上塗の作業と適度な温度と湿度を保った漆風呂と呼ぶ室の中で乾燥させる。 神経のはりつめたきめ細かい手仕事を繰り返し完成する作品は漆独特の艶やかな美しい仕上がり。
「石地塗|いしじぬり」は、別名「鞘塗り|さやぬり」と呼ばれる技法の中の一つ。研ぎつけた下塗り面に漆を塗り、乾かないうちに、乾漆粉(ガラス板などに漆を塗り、固めた物をさらに粉末にしたもの)を蒔き、乾いた後生漆で固め表面を平らに研ぐ。さらに胴擦りして摺漆をし磨き上げて仕上げる。通常の塗りに比べ丈夫で傷も目立ちにくいため、手によく触れるものに適している。