辻 石斎
北大路魯山人が大正14年開業の「星岡茶寮」のためにデザインし、二代目 辻 石斎と作り上げたひょうたん型の弁当箱。 長い間使われていなかった魯山人デザイン ( ひさご ) を、 五代目 辻 石斎 × PHAETON が金・銀 ( プラチナ ) にて、 80年ぶりに復活させた特注品。 指物の技術を駆使した大小の檜の曲物を繋ぎ合わせ瓢箪型を形作り、その後漆塗りと蒔絵によって完成する。オリジナルには無い、日月椀を思わせる金と銀のシンプルな配色に加え、黒地の部分は一閑張ではなく刀の鞘にも使われる、強度を上げ傷が目立ちにくい「石地塗り」で仕上げている。銀色のものは金と属性の近いプラチナを使用しており、黒ずみにくく、金と同様に長く手入れしながら使用することができる。 曲物は通常このような長期間使用する器には使われないが、数百年にわたり山中の技術と知識が統合された結果、魯山人と二代目 辻 石斎により実用に耐えうる器として結実した。未だに職人が息づき漆塗りに適した環境である山中でしかできない器である。
空気中の塵との戦いの中で行なう上塗の作業と適度な温度と湿度を保った漆風呂と呼ぶ室の中で乾燥させる。 神経のはりつめたきめ細かい手仕事を繰り返し完成する作品は漆独特の艶やかな美しい仕上がり。
「石地塗|いしじぬり」は、別名「鞘塗り|さやぬり」と呼ばれる技法の中の一つ。研ぎつけた下塗り面に漆を塗り、乾かないうちに、乾漆粉(ガラス板などに漆を塗り、固めた物をさらに粉末にしたもの)を蒔き、乾いた後生漆で固め表面を平らに研ぐ。さらに胴擦りして摺漆をし磨き上げて仕上げる。通常の塗りに比べ丈夫で傷も目立ちにくいため、手によく触れるものに適している。